第1回 人文学とデジタル技術(2026)
この章は、内容の学習というより、研究活動を進める状態をつくるための準備の章です。研究は「ひらめき」だけでは進まず、日々の小さな作業が積み上がって前に進みます。その小さな作業を支えるのが、学習環境と運用ルールです。
この手引きでは、毎回さまざまなツールを扱います。しかし、ツールの操作だけを覚えても、研究生活の中に定着しないと意味がありません。そこで最初に、何のために/どう進めるか/どう評価されるかを整理し、安心して動き出せる状態を整えます。
本授業の目的は、人文学研究における「調査・読解・思考・執筆・発信」という研究活動の流れを、デジタル技術を用いて設計し、運用し、発展させることを体系的に学ぶことです。単なるツールの操作習得に留まらず、研究目的や関心に応じてツールを選択し、組み合わせ、研究プロセスの中に位置づける判断力を養います。
ここで重要なのは、研究の中心はあくまで人間の頭と手にある、という前提です。ツールは研究を「代行」するものではなく、研究を継続可能にするための足場です。
この手引きは、スマートフォンだけでも「読む」ことはできますが、作業の多くはPCのほうが安定します。特にNotionや各種ツールは、キーボードと大きい画面があると作業効率が大きく変わります。
必要なもの
Notionは「ページ」と「ブロック」でできています。この二つがNotionの特色で、その点について理解しておくと、Notionの操作の大半は解決します。
1.4.1 アカウント作成と初期設定
Notionのアカウントを作成し、ログインできる状態にします。学内メールが使える場合は、学内メールで作ると後々楽なことが多いです。
初期設定の優先順位
1.4.2 ページ構造
ページは入れ物で、入れ子にできます。おすすめは、まず「玄関」を作ることです。最初から完璧に分けなくて大丈夫ですが、「投げ込み場所」だけは先に作ると、詰まりにくくなります。
玄関ページ(例)
1.4.3 ブロック
Notionの1行1行はブロックです。段落、見出し、箇条書き、チェックボックス、画像、表など、ほとんど全部がブロックとして扱われます。操作の近道はスラッシュ(/)です。/ を打つと部品一覧が出るので、そこで選ぶだけで形が作れます。
よく使うブロック
/h1, /h2, /h3)
箇条書き(/bulleted list)
番号付きリスト(/numbered list)
To-do(/to-do)
目次(/toc)
引用(/quote)
コード(/code)
コールアウト(/callout)
1.4.4 共有
Notionの共有は便利ですが、設定が複数あります。ここで混乱しやすいのは「リンク共有」と「Web公開」の違いです。
限定共有が目的なら、基本は検索公開はオフです。編集権限やコメント権限も必要最小限にします。
1.4.5 テンプレート
テンプレートは「毎回の型」です。型は窮屈に見えますが、実は自由を生みます。毎回ゼロから書く負担が減ると、内容(考える部分)に集中できます。他のユーザーが作った完成度の高いテンプレートを使うこともできます。
入力効率化は、速さ自慢のためではありません。研究の集中は「中断」で崩れます。タイプミスやフォーマットの崩れは、全部「中断」になります。小さな中断を減らすと、思考の連続性が守られます。
1.5.1 Markdown 記法
NotionはMarkdown記法に対応しています。全部覚える必要はありませんが、次のあたりは頻出です。Markdown記法を覚えると、構造化した文章を高速で作成できるようになります。
# 見出し1
## 見出し2
### 見出し3
- 箇条書き
1. 番号付き
- [ ] To-do(チェックボックス)
**太字**
*斜体*
`コード`
> 引用(引用ブロック)
Markdownは「見た目」だけでなく、構造を作るのに役立ちます。見出しが整うと、後から読み返すときに迷いません。
1.5.2 ショートカット
覚えた分だけ作業スピードが上がります。ただし、最初の段階で全部覚える必要はありません。まずは以下のショートカットだけで十分です。
| 操作 | ショートカット |
|---|---|
| 太字 | Ctrl/Cmd + B |
| 斜体 | Ctrl/Cmd + I |
| 下線 | Ctrl/Cmd + U |
| 元に戻す | Ctrl/Cmd + Z |
タイピングは、研究における「筆圧」に近い基礎体力です。文章を書く量が増えるほど、タイピングの差は積み上がって効いてきます。
本授業では、無料で遊べるタイピング・ゲーム寿司打(sushida.net)での練習をお勧めします。
具体的な目標として、寿司打の「高級 1万円コース」(文字数が9から14文字以上、制限時間120秒)の「普通モード」を「お釣りあり」でクリアすることを設定します。目標が明確であれば、練習が習慣化しやすいからです。
練習の考え方
おすすめは「短く、頻繁に」です。一気に30分やるより、5分を毎日やるほうが伸びやすいです。
伸びやすいポイント
タイピングが伸びないときは、気合よりフォームが効きます。
キーボードを身体化する
自分のコンピュータのキーボード表を印刷して、目に見えるところに貼っておきましょう。特に、記号の位置を頭と身体で覚えましょう。自分のお気に入りのキーボードを見つけるのも良いと思います。